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人事院は2020年人事院勧告の第二弾を10月29日に発表し、月例給(月給)を据え置きするよう国会と内閣に勧告しました。
月例給の据え置きは、2013年以来7年ぶりとなります。
過去の勧告率
2019年 | プラス0.09% |
2018年 | プラス0.16% |
2017年 | プラス0.15% |
2016年 | プラス0.17% |
2015年 | プラス0.36% |
2014年 | プラス0.27% |
2013年 | 据え置き |
2012年 | 据え置き |
2011年 | マイナス0.23% |
情勢適応の原則から、公務員の給料は民間の給与水準に準拠して定めることとされており、人事院が毎年6月頃に民間企業の給与水準を調査しています。今年の調査時点では、新型コロナウイルスの感染拡大による影響が限定的で、公務員との差が小さかったとみられます。
10月7日には人事院勧告の第一弾として期末・勤勉手当(ボーナス)の0.05か月の引き下げ勧告を発表しましたので、月給も下がると予想していましたが、今回は据え置きとのことで、個人的には驚きました。
都道府県庁や政令市はどうなる?
都道府県庁や政令市などの地方自治体については人事院勧告が直接適用されませんが、重要な参考資料としつつ各自治体の人事委員会が必要な勧告を出すことになっています。
月給については、これまで勧告が行われた自治体のうち、仙台市と名古屋市がマイナス改定を求めましたが、それ以外の多くの県や政令市は据え置きとしています。
自治体 | 月例給の改定率 |
仙台市 | -0.12% |
名古屋市 | -0.24% |
据え置き勧告で昇給はなし?
今年は据え置きの勧告になる見通しですが、毎年の昇給額が0になるわけではありません。
これを理解するためにはまず公務員の給料の決定方法について知る必要があります。
公務員の給料は、縦軸に「号」、横軸に「級」をとった「俸給表」「給料表」と呼ばれる表で事細かに定められています。
勤務実績が良好な一般的な職員の場合、1月1日に行われる年に1回の定期的な「昇給」で俸給表の「号」が4つ(新規採用職員の場合、初年次は3つ)上がるとことになり、毎月5000~7000円程度給料が増えます。
この「昇給」を毎年繰り返し、一定の年齢に達すると「主任」に「昇格」します。
昇格すると「級」が1つ上がり、給料も跳ね上がります。係長や課長補佐、課長に昇格するときも同じように「級」が上がります。
国家公務員の俸給表の詳細は以下をご覧ください。
本題に戻ります。「月例給の据え置き」とは、この俸給表の額を書き換えないということです。同様に「月例給の引上げ」は、俸給表の額を多めに書き換えること、「月例給の引き下げ」は、俸給表の額を少なめに書き換えることを指します。
月例給の引上げのことを「ベースアップ」と言うこともあります。
具体的な例として、2019年4月1日に大卒で入職した職員を見てみましょう。この職員の最初の月給は180,700円(1級25号俸)です。
号俸 | 引き上げ前 | 引き上げ後 | |
1級25号俸 | 180700 | →
→ → |
182200 |
1級26号俸 | 182400 | 183900 | |
1級27号俸 | 184000 | 185500 | |
1級28号俸 | 185700 | 187200 | |
1級29号俸 | 187200 | 188700 | |
1級30号俸 | 188900 | 190400 | |
1級31号俸 | 190700 | 192200 | |
1級32号俸 | 192400 | 193900 |
2020年1月1日の定期昇給では、3号俸上がって月給185,700円(1級28号俸)になるはずでしたが、人事院が月例給の0.09%の引上げを行い、俸給表が多めに書き換えられたため、1500円多い187,200円になりました。
これが月例給の引上げによる効果です。
今回は据え置きということなので、上の職員の場合は、2021年1月1日の定期昇給で4号俸上がって月給193,900円(1級32号俸)になるでしょう。