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国や各自治体の採用パンフレットを見てみると、様々な職員の経歴やキャリアパスについて知ることができてとても面白いですよね。
特に国家公務員は1~2年の短いスパンで異動することが少なくないため、バラエティ豊かな経歴になりがちです。
省内での異動はもちろんのこと、他省庁や独立行政法人、地方自治体に出向するケースも多く、役職もころころ変わります。
例えば総務省の令和2年度一般職採用パンフレットの28ページで紹介されている職員については、平成12年に本省に採用され、平成29年4月に本省主幹(課長補佐級)、翌年には財務担当部長として芦屋市に出向しています。
また8ページで紹介されている職員にいたっては、平成10年に本省に採用され、平成18年に本省係長、翌年に上尾市に出向して課長職に就き、更に翌年には同市の部長に昇進しています。そして平成22年に本省に復帰した際は再び係長級に就いています。平成25年に本省主幹(課長補佐級)に昇進し、平成28年には岡山県に課長級として再び出向しています。
係長から課長・部長に異動したのにまた係長に戻っていて、一見すると降格しているように見えますが、実はそうではありません。
これには公務員の役職のからくりがあります。
本省・都道府県庁・市町村の比較
地方公務員も国家公務員も似たような職名が多いですが、同じ「部長」「課長」でも、偉さや給料は大きく異なります。
都道府県庁、市町村、国家公務員(本省)の職階を比較すると以下のとおりとなります。
本省 | 都道府県庁 | 市町村 | |
10級 | 課長(特に重要) | ||
9級 | 課長(重要) | 部長 | |
8級 | 室長(困難) | 次長 | |
7級 | 室長 | 総括課長 | |
6級 | 課長補佐(困難) | 課長 | (部長) |
5級 | 課長補佐 | 総括課長補佐 | 総括課長 |
4級 | 係長(困難) | 課長補佐 | 課長 |
3級 | 係長 主任(困難) |
係長 | 係長 |
2級 | 主任 係員(特に高度) |
係員(特に高度) | 係員(特に高度) |
1級 | 係員 | 係員 | 係員 |
地方公務員の職務の級の構成について(行政職給料表(一))より
左の級は給料表・俸給表での位置を表します。級が大きければ大きいほど給料は高くなります。
これにより、本省の課長(重要)=都道府県庁の部長 >>> 本省の課長補佐(困難)=都道府県庁の課長=市町村の部長 >>> 本省の係長=都道府県庁の課長補佐=市町村の課長という式が成り立つことがわかります。
本省、管区機関、府県単位機関、地方出先機関の比較
国家公務員の中で比較してみても、「課長」「課長補佐」などの偉さや給料が異なることがわかります。
本省 | 管区機関 | 府県単位機関 | 地方出先機関 | |
10級 | 課長(特に重要) | 管区長(重要) | ||
9級 | 課長(重要) | 管区長
部長(特に重要) |
||
8級 | 室長(困難) | 部長(重要) | 機関の長(困難) | |
7級 | 室長 | 課長(特に困難) | 機関の長 | |
6級 | 課長補佐(困難) | 課長 | 課長(困難) | 機関の長(困難) |
5級 | 課長補佐 | 課長補佐(困難) | 課長 | 機関の長 課長(困難) |
4級 | 係長(困難) | 課長補佐 係長(困難) |
係長(特に困難) | 課長 |
3級 | 係長 主任(困難) |
係長 主任(困難) |
係長 主任(困難) |
係長(相当困難) 主任(困難) |
2級 | 主任 (係員(特に高度) |
主任 (係員(特に高度) |
主任 (係員(特に高度) |
主任 (係員(特に高度) |
1級 | 係員 | 係員 | 係員 | 係員 |
地方公務員の職務の級の構成について(行政職給料表(一))より
左の級は給料表・俸給表での位置を表します。級が大きければ大きいほど給料は高くなります。
本省の課長補佐は管区機関の課長補佐(困難)、府県単位機関の課長、地方出先機関の長・課長(困難)とほぼ同等であることがわかります。
都道府県庁のキャリアパス
ちなみに、都道府県庁のキャリアパスは主に以下のとおりとなっています。
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ひよっこ係員
入職して一番初めにつく肩書で、ヒラ職員のことを指します。
給料表は1級が適用されます。 -
まだまだペーペー係員(特に高度)
係員(特に高度)は主任と呼ばれる場合も多いです。
入職して数年たつとこの位置づけになり、給料表は2級が適用されるようになります。 -
まだまだ若手係長(特に困難含む)
一定の年齢に達するか昇進試験に合格すると、係長に昇進し、給料表も一つ上がります。
年齢は30代後半から40後半程度。プレイングマネージャーとして部下も2~3人をマネジメントしつつ係の業務を統括します。
グループリーダー、掛長、主査などと呼ぶ自治体もあります。 -
THE 中間管理職課長補佐
係長(特に困難含む)の一つ上が課長補佐です。その名のとおり課長を補佐しつつ係長をまとめることが仕事です。
主に一つの課のみを担当します。
上司と部下の板挟みになりやすい、まさに中間管理職でしょう。
課長代理、副課長と呼ぶ自治体もあります。 -
課長まであと少し総括課長補佐、課長補佐(困難)
課長に限りなく近い役職で、ニつ以上の課以上の人事、予算等の重要な総括的業務を担当します。
(総括)課長補佐までは管理職ではないので、残業代が支給されます。そのため、課長よりも多忙な部署の(総括)課長補佐のほうが給料が高くなったりします。 -
管理職入門課長、室長
ここからが管理職です。権限や責任もかなり大きくなり、給料も跳ね上がります。
管理職選考を合格した人だけが昇進できますが、プレッシャーやストレスの強さなどからあえて課長にならない人も多いようです。
残業代はつかなくなります。 -
まあまあ偉い統括課長
部の業務を統括したり、本庁の人事や予算等の重要な総括的業務を担当します。
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めざせ部長次長
部長を補佐し、複数の課の総括的業務を担当します。
次長と言いながら課長よりも偉いです。 -
かなり偉い部長
その名のとおり部のトップで50代後半頃につくことがほとんどです。
ここまで出世できるのは一握りで、係員が業務で直接話す機会はほとんどありません。
専用の執務室がある場合が多いです。